自炊訴訟について

自炊代行提訴についての雑感 --- 玉井克哉

「自炊代行」を否定することは全てのビジネスを否定することではないか 古川 賢太郎

自炊関連でアゴラに上がっている日本の意見がヒドすぎてどうしたらいいのか分からないのでブログに書いてみる。

玉井さんが言うとおり、私的複製に関してそれを代行するのは著作権法違反となります。また、出版社はパッケージ化して作品を売っているのであって、純粋なコンテンツを売っているというわけではありません。古川氏の意見からはその当たりがすっぽりと抜け落ちていて、前々分かってない人が自分のフィールドに引き寄せ(まくっ)て書いている感想しかありません。

さて、というわけで、立体的に捉えるために丁寧に見てみましょう。

著作権法 第三十条
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる

強調した通りです。自分でやる場合のみ、です。自炊という言葉の通りです。

業として行うものがそこに介在している実際の例として、池袋の裏通りにあるTVドラマレンタル屋が一番分かりやすいと思うので、ちょっと説明を入れてみますと、池袋の裏通りのマンションにTVドラマレンタル屋というものがあります。多分普通の人は知らないと思いますが、何かと言うと、中国や台湾で放映された日本の番組(中国語字幕付き)を録画したものが日本国内に流れてきて、中国人・台湾人向けにレンタルされているのです。
10年位前に一度行ったことがあるだけなので今もあるか知りませんが。

自炊に限らない、ということはそういうことです。
複製権は完全に著作権者側にあるにも関わらず、それを例外的に認めている、という形態を取っているのは、それを外しちゃうともう何でもありになるからです。玉井さんのははっきり言って書き方が悪くて、あれじゃあ反発が多かろうと思いますがどうなんでしょう。TVドラマレンタル屋よろしく電子書籍も何でもありになってしまったら出版業界はそれこそ崩壊するでしょう。自炊代行ばかりか、自炊代行する間だけ一時的に所有権を移転したりやりたい放題のスキームがあちこちで乱立することは間違いありません。

そんなこんなで、個人的にこの自炊に関する話はモンスターカスタマー的だなぁと感じています。

pdf化したいんだ!ってニーズがあるから、法律の一線を越えていいというのは法治国家としてナンセンスです。むしろ、そのためにどういった法的な枠組みでどういった例外を認めるか、という所に議論を持っていかなければなりません。っていうか、pdf化のニーズがこんなにあるんだ!と叫んでる連中はじゃあ電子出版権を買い漁って電子出版者を立ち上げればいいじゃないですか。とか思います。だってニーズがあってチャンスなんでしょ??

今この時代にしっかりとフィットした電子出版サービスがまだ出てきていないのは全く持ってその通りです。そうは言ってももう1-2年のうちには出揃って、3-5年のうちにカタが付くでしょう。今焦って全てを電子化しようとするのはナンセンスですが、一方で電子書籍が本格始動する際にはたとえ今本棚にあるタイトルでもどうせまた買う必要が出てくるのは自明です。自炊は今からシコシコ自炊してなさいってことですねー。

がんばってくださーい。

追伸
著者の方々の意見もダサいなーと思います。皆さん、それぞれ主張をがんばってあるべき姿を作っていきましょー。